ほとり)” の例文
驪山の温泉の所在地から、日本里數で三里許り往くと灞水のほとりに出る。この川幅は二町に近い。川に灞橋が架してあるが、その橋の兩側に楊柳が多い。
大師の入唐 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
何十里かぶっとばした後、馬も人もようやく疲れてくると、高原の中の小川を求めてそのほとりに下り、馬にみずかう。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
二人は其のほとりへ腰を下ろして、湿っぽい土の匂いを嗅ぎながらぼんやり足を投げ出して居ると、何処からともなく幽玄な、微妙な奏楽の響きが洩れて来た。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼等夫妻は千曲川ちくまがわほとりに家をもち、養鶏ようけいなどやって居た。而して去年きょねんの秋の暮、胃病いびょうとやらで服薬して居たが、ある日医師が誤った投薬の為に、彼女は非常の苦痛をして死んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小川のほとりには両岸に水仙、山吹、菖蒲、桔梗、女郎花など四季とり/″\の草花を数限りなく培養し、日照りのよい南面の傾斜地けいしゃちには桃の林を作り、其処には牛、羊、孔雀
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人民がことごとく服を白くしているとあれば天子のに相違ない。李陵は武帝ぶていほうじたのを知った。北海のほとりいたってこのことを告げたとき、蘇武そぶは南に向かって号哭ごうこくした。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
やはり古沼のほとりで信一と一緒に聞いた不思議な響き、………或る時は森の奥の妖魔が笑う木霊こだまのような、ある時はお伽噺に出て来る侏儒こびと共が多勢揃って踊るような、幾千の細かい想像の綾糸で
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)