深碧ふかみどり)” の例文
壁はいよ/\深碧ふかみどりの色を加へて、野中の大杉の影はくつきりと線を引いたやうに、その午後の晴やかな空にそびえて居る。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
朝曇り後晴れて、海のように深碧ふかみどりいだ空に、昼過ぎて、白い雲がしきりにちぎれちぎれに飛んだ。其が門渡とわたる船と見えている内に、暴風あらしである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
降るような蝉の鳴声にまじって、かすかに爆音に似た音が耳朶じだを打った。林のわきに走り出て、空を仰いだ。しんしんと深碧ふかみどりの光をたたえた大空の一角から、空気を切る、金属性の鋭い音が落ちて来る。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)