淫楽いんらく)” の例文
旧字:淫樂
残り五十両はそのまゝもとの通り幹の穴に隠し、右の四拾両を以て、一時めかけを囲ひ、淫楽いんらくふけりをり候処、その妾も数年にして病死致し
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お家の断絶後における淫楽いんらくの自由を得んために、じゃまな嫡子はもとの忠僕であったあの質屋、すなわち三河屋へくれてしまったのでした。
しかるに彼はこの志士が血の涙の金を私費しひして淫楽いんらくふけり、公道正義を無視なみして、一遊妓の甘心かんしんを買う、何たる烏滸おこ白徒しれものぞ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
登の頭に殺人淫楽いんらく、という意味の言葉がうかんだ。長崎で勉強したときに、和蘭オランダの医書でそういう症例をまなんだ。
二人ふたりは、はた目には酸鼻さんびだとさえ思わせるような肉欲の腐敗の末遠く、互いに淫楽いんらくを互い互いから奪い合いながらずるずるとこわれこんで行くのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
然し、淫楽いんらくは、この特別な肉体によってすらも、人の心はみたされはせぬ。
二十七歳 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
淫楽いんらくくちばみまとふ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)