気合けはい)” の例文
旧字:氣合
塔をめぐる音、壁にあたる音の次第に募ると思ううち、城の内にてにわかに人の騒ぐ気合けはいがする。それが漸々だんだん烈しくなる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仕方がなく滝本が、庭をまはつて見ると、窓は閉つてゐたがカーテンに隙間があつたので、気合けはいを窺ふと、百合子は、ベツドに突ツ伏してゐた。床に膝を突いて——。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そして耳のそばで呼吸の気合けはいがする。天下何人なんびとか縮み上がらざらんやだ。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
愈この盾を使わねばならぬかとウィリアムは盾の下にとまって壁間を仰ぐ。室の戸を叩く音のする様な気合けはいがする。耳をそばだてて聞くと何の音でもない。ウィリアムは又内懐うちぶところからクララの髪毛かみげを出す。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)