歳晩さいばん)” の例文
と云ったきり湯河は下を向いて何かしら考え始めた、———二人はもう新橋を渡って歳晩さいばんの銀座通りを歩いていたのである。
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
歳晩さいばんのある暮方、自分は友人の批評家と二人で、所謂いわゆる腰弁街道こしべんかいどうの、裸になった並樹の柳の下を、神田橋かんだばしの方へ歩いていた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
筑波山下つくばさんか医師いしなる人に一通。東京銀座の書店主人に一通。水国すいこくの雪景色と、歳晩さいばんの雪の都会の浮世絵がまぼろしの如く眼の前に浮ぶ。手紙を書き終えて、余は書き物をはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかも「乳房榎」の場合と同じく「累ヶ淵」もまた最も鑑賞すべきは、江戸歳晩さいばん風景の如実なる宗悦殺しに端を発し、凄艶豊志賀の狂い死にまでにあるとこれまた、点を辛くして高唱したい。
歳晩さいばんの銀座」という題で、絹子さんと僕の写真が載っていた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)