此男このおとこ)” の例文
其後一年ほど過ぎて此男このおとこ部屋へや何か騒がしく、ゆるして下されと叫ぶ。人々出て見しに早くも影無し。此度このたびも半月ほど過ぎて越後えちごより帰りしが、山の上にてかの国の城下の火災を見たりと云ふ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
洋行帰りのハイカラで、牛乳配達のように綺麗に頭髪あたまを分けている。頭も気に入ったが此男このおとこの帽子も気に入った。山高の低い奴で、此頃流行の形だ。手品師も丁度んな帽子を使ったと覚えている。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小町こまちいろらふ島田髷しまだまげ寫眞鏡しやしんきやう式部しきぶさいにほこる英文和譯ゑいぶんわやく、つんで机上きじようにうづたかけれども此男このおとこなんののぞりてからずか、仲人なかうどもヽさへづりきヽながしにしてれなりけりとは不審いぶかしからずや
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)