正倉院しょうそういん)” の例文
この香木こうぼく聖武しょうむ天皇の御代、中国から渡来したもので、正倉院しょうそういんふうじられて、勅許ちょっきょがなければ、観ることすらゆるされないものだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現存の正倉院しょうそういん御物と万葉集と仏教美術を想起しただけでも驚くべきであろう。そこにはあらゆる美と荘厳と、また悪徳の深淵しんえん渦巻うずまいていた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
またもし千数百年前に渡っていて、これが勿体もったいないたとえではあるが、仮に正倉院しょうそういん御物ぎょぶつに混っていたとしても、何人なんぴともその価値を疑わないに違いない。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
正倉院しょうそういんの尺八は一尺一寸以下八種あるそうである。事によるとこの尺八は音の高度を示すものかもしれない。
日本楽器の名称 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鼓村氏は、浜子が体が弱いので、転地ばかりしているから、その時持ってゆくのに具合のい、寸づまりで、幅の広い箏を、正倉院しょうそういん御物ぎょぶつかたちを模して造らせた話をした。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もし長くその椅子に坐していたら必ず新生面をひらく種々の胸算むなざんがあったろうと思う。正倉院しょうそういんの門戸を解放して民間篤志家の拝観を許されるようになったのもまた鴎外の尽力であった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
奈良の現状では、正倉院しょうそういんが何だか知らないものはほとんどだが、槍の宝蔵院とたずねれば
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)