欠所けっしょ)” の例文
旧字:缺所
万一の事でもあろうものなら、手前なんぞは先生とはちがって虫けら同然の素町人すちょうにんゆえ、事によったら遠島えんとうかまず軽いところで欠所けっしょまぬかれまい。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そうですよ、菱屋は欠所けっしょ。江戸構えになった母娘が二人、草加そうかとか千住せんじゅとかにいると聞きましたが——」
この嚇しはきます。今晩は寝ないでも市場の関係人全体は手をわけても、その身許を突きとめない限り市場組合員は所払いとなるか、欠所けっしょとなるか、そのことはわかりません。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
親兄弟が死んだり欠所けっしょになったり所払いの仕置きを受けたりしたために、私の家へ自然に引取って養っていて、いまでは私一人を頼りに生きて来た者ですけんど、私のうちにも食べる物としてはなし
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
そこでおとなしく「君などは年が年であるから大分だいぶんとったろう」とそそのかして見た。果然彼は墻壁しょうへき欠所けっしょ吶喊とっかんして来た。「たんとでもねえが三四十はとったろう」とは得意気なる彼の答であった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白洲しらすは思いのほか寛大で、松太郎は、三宅島に流され、目白長者の寅五郎の屋敷は欠所けっしょになりました。
入牢じゅろう、追放、欠所けっしょ、手錠に処せられた、大町人、役者、芸人の数もすくなくはありませんが、木場の増田屋惣兵衛などは最も手ひどい目に逢った一人で、町奉行鳥居甲斐守に睨まれて入牢
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)