欝金木綿うこんもめん)” の例文
旦那は欝金木綿うこんもめんの風呂敷を、ちょっとはぐって見て、これを着て行くのかい、これよりか、この間の方がお前には似合うよと云った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
百兵衞はさう言つて、内懷ろから欝金木綿うこんもめんの財布を出すと、中から大事さうに疊んだ紙片を拔取り、そのしわを寧丁に膝の上に伸して、平次の方に押しやるのでした。
それと向い合った壁際には桐の箪笥が油単ゆたんに被われて、その側に紫檀の大きな鏡台が置いてあった。その少し斜め上の壁に細棹ほそざおの三味線が一つ、欝金木綿うこんもめんの袋にはいって鴨居から下っていた。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ようやく衣裳いしょうそろえて、大きな欝金木綿うこんもめんの風呂敷にくるんで、座敷のすみに押しやると、髪結が驚いたような大きな声を出して勝手口から這入はいって来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
和尚は手提てさげの煙草盆の浅い抽出ひきだしから欝金木綿うこんもめん布巾ふきんを取り出して、くじらつる鄭重ていちょうに拭き出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)