樺桜かばざくら)” の例文
男は、樺桜かばざくら直垂ひたたれ梨打なしうち烏帽子えぼしをかけて、打ち出しの太刀たち濶達かったついた、三十ばかりの年配で、どうやら酒に酔っているらしい。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
気高けだかくてきれいで、さっとにおいの立つ気がして、春のあけぼのかすみの中から美しい樺桜かばざくらの咲き乱れたのを見いだしたような気がした。夢中になってながめる者の顔にまで愛嬌あいきょうが反映するほどである。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
次郎はその時、月あかりに、汗にぬれた赤ひげと切り裂かれた樺桜かばざくら直垂ひたたれとを、相手の男に認めたのである。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八重の盛りが過ぎて樺桜かばざくらが咲き、ふじはそのあとで紫を伸べるのが春の順序であるが、この庭は花の遅速を巧みに利用して、散り過ぎた梢はあとの花が隠してしまうように女王がしてあったために
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)