かなめ)” の例文
お島はかなめけやきの木とで、二重になっている外囲そとがこいまわりを、其方そっちこっち廻ってみたが、何のこともなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
勝手かってに屋敷の中を通る小学校通いの子供の草履ばた/\で驚いて朝寝のねむりをさましたもので、乞食こじき物貰ものもらい話客千客万来であったが、今は屋敷中ぐるりと竹の四ツ目籬めがきや、かなめ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
両側をかなめかなにかの生籬にしてあるのはいゝとして、狭い靴脱から、もう縁板がいやに拭き光りがしてをり、廊下を踏んでゆくと、茶黒い光沢つやを帯びたものがくつしたを吸ひとるやうにひつぱるのである。
薄暮の貌 (新字旧仮名) / 飯田蛇笏(著)
西片町界隈かいわいは、古いお馴染なじみの町である。この区域の空気は一体に明るいような気がする。お作はかなめ垣根際かきねぎわあるいている幼稚園の生徒の姿にも、一種のなつかしさを覚えた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
然し整理熱は田舎に及び、彼の村人も墓地を拡張整頓するそうで、此程周囲まわりの雑木を切り倒し、共有の小杉林をひらいてしもうた。いまにかなめ生牆いけがきめぐらし、桜でも植えて奇麗にすると云うて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)