柔軟やわらか)” の例文
家内は一人ずつ寝巻に着えさせた。下女はまた、人形でも抱くようにして、柔軟やわらかなお繁のほおへ自分の紅い頬を押宛てていた。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
イギリス旦那マスターの「文明履物かわぐつ」のようなチョコレート色の皮膚と、象牙ぞうげの眼と、蝋引ろうびきの歯、護謨ごむ細工のように柔軟やわらかな弾力に富む彼女らの yoni とは
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
柔軟やわらかな、つやい髪は見た事がないってね、——死骸しがいを病院から引取る時も、こう横に抱いて、看護婦が二人で担架へ移そうとすると、背中から、ずッとかかって
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
スチームはムンムンするほど部屋を温めて居り、肘掛椅子は実に柔軟やわらかくフカフカしている。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはいくらかその重みで、荷になるような気がしましたが、地質の柔軟やわらかさはもとのままに残っていました。彼は小さなメアリゴウルドが縁取ふちどりをしてくれたハンカチを取り出しました。
働き者だとか、気性まさりだとか言われて、男と戦おうとばかりするような毅然しゃんとした女よりも、反って涙脆い、柔軟やわらかな感じのする人の方が好ましい。快活であればなお好い。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
下女は人形でも抱くようにして、柔軟やわらかなお繁の頬へ自分の紅い頬を押宛てていた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)