松蔦しょうちょう)” の例文
それらの事情はつまびらかにしないが、弱冠にして老坪内博士の事業に拮抗する壮挙を実現し、左團次を筆頭に、猿之助、松蔦しょうちょう、寿美蔵
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
顔も、左団次みたいな、立派な顔をしていました。長兄の顔は、線が細く、松蔦しょうちょうのようだと、これも家中の評判でありました。
兄たち (新字新仮名) / 太宰治(著)
ああいう芸は模倣し易いわけだが、どういう訣か、此きりで無くなり相だ。源之助の名を継いだ五代目はまだ若いし、先代市川松蔦しょうちょうよりは融通はきくが、まだその年にも達していない。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
短歌俳諧はいかいがそうであり、浮世絵がそうであると言い、また彼の生まれて初めて見たカブキで左団次さだんじ松蔦しょうちょうのする芝居を見て、その演技のモンタージュ的なのに驚いたという話である。
ラジオ・モンタージュ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この時の夫人の驚きようの美くしかったこと……市川松蔦しょうちょうだって、こうは行くまい。細長い三日月まゆの下で、大きな瞳をゆっくりとパチパチさした。唇を半分開いてワナワナと震わした。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)