松柏まつかしわ)” の例文
また辰巳たつみには松柏まつかしわの生い茂りました青山が峨々がゞとそびえ、その洞にある醍醐寺からは遠寺とおでらの晩鐘がきこえて参ります。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
断崖だんがいの左右にそびえて、点滴声する処ありき。雑草高きこみちありき。松柏まつかしわのなかをく処もありき。きき知らぬ鳥うたえり。褐色なる獣ありて、おりおりくさむらに躍り入りたり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
断崖の左右にそびえて、点滴てんてきこえするところありき。雑草ざつそう高きこみちありき。松柏まつかしわのなかをところもありき。きき知らぬ鳥うたへり。褐色なるけものありて、をりをりくさむらおどり入りたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
幾株となき松柏まつかしわの根こそぎになりて谷間に吹倒されしに山腹の土落ちたまりて、底をながるる谷川をせきとめたる、おのずからなる堤防をなして、すさまじき水をばたたえつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幾株いくかぶとなき松柏まつかしわの根こそぎになりて谷間に吹倒ふきたおされしに山腹のつち落ちたまりて、底をながるる谷川をせきとめたる、おのづからなる堤防をなして、すさまじき水をばたたへつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)