木遣きや)” の例文
木遣きやりでも出そうな騒ぎ。やがて、総がかりで女をかつごうとしていると、そばの闇黒くらやみから、りんとして科白せりふもどきの声が響いた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
氏子中の町々を興奮の坩堝るつぼにし、名物の十一本の山車だしが、人波を掻きわけて、警固の金棒の音、木遣きやりの声、金屏風の反映する中をねり歩いたのです。
とにもかくにも彼の家では、やがて木遣きやりの唄もいさましく送られて来るであろうこの男を待っていたであろう。それは目に見えるような事実なのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
万吉はいい声だったが、明らかに木遣きやりの声であったし、節まわしも木遣りそのままであった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
振舞い酒に好い気持になった連中が、向うから来る廻礼の女なんかをひやかしながら、木遣きやりの声を張り揚げて流してゆく。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その間、ながく低くえるような木遣きやり歌であった。棟梁はいくらかあおざめていた。仕事の神聖さに圧されてこわばるような緊張をおぼえた。彼は木槌きづちをふりあげて棟木をうちおさめた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
日枝ひえ神社の山王祭と共に、御用祭又は天下祭と言はれ、かく年に行はれたこの威儀は、氏子うぢこ中の町々を興奮の坩堝るつぼにし、名物の十一本の山車だしが、人波を掻きわけて、警固の金棒の音、木遣きやりの聲
大通りに、木遣きやりの声が流れて来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)