普通つね)” の例文
襦袢じゅばんの袖に花と乱るる濃き色は、柔らかき腕を音なくすべって、くっきりと普通つねよりは明かなる肉の柱が、ちょうと傾く絹紐リボンの下にあざやかである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
磧は黒く醜くなりすなは黄ばめる普通つねの沙となれり、見よ見よいかにと告げ知らするに二人は驚き、まなこみはりて見れば全く父の言葉に少しもたがわぬすなこいし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
葡萄大谷ぶどうおおやの別天地は生気溌溂はつらつたる緑葉に埋もれ、人々は甦生そせいの力に溢れ、あるいは鉱山の発掘に、または武術の鍛練に、勤むべきが普通つねであったのに、今年はそれが不可能できなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
磧は黒く醜くなりすなは黄ばめる普通つねの沙となれり、見よ/\如何にと告げ知らするに二人は驚き、まなこみはりて見れば全く父の言葉に少しも違はぬ沙磧、あゝ如是かゝるもの取らんとて可愛き弟を悩せしか
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)