晩春はるさき)” の例文
山田と伊沢は四時ごろになって寺を出た。晩春はるさきの空気がゆるんでもやのような雨雲が、寺の門口かどぐちにある新緑のこずえに垂れさがっていた。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
閨秀けいしゅう画家の伊藤美代乃女史は、秋田の出身であるが、その女史が小さい時、それは晩春はるさきの事であった。
虎杖採り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東海道になったその街には晩春はるさき微陽うすびしていた。それはひる近いころであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼には五歳いつつになる女の子があって、悪漢のお祖父じいさんが、非常に可愛がっていたから、それからさきへやったのだ、むせむせする晩春はるさきのことだ、その小供が二階の窓の下で遊んでたから
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)