日蔭町ひかげちょう)” の例文
日蔭町ひかげちょう寄席よせの前まで来た私は、突然一台の幌俥ほろぐるまに出合った。私と俥の間には何のへだたりもなかったので、私は遠くからその中に乗っている人の女だという事に気がついた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
種彦は今日きょうしも老体の身に六月大暑だいしょの日中をもいとわず、かねてより御目通おめどおりを願って置いたしば日蔭町ひかげちょうなる遠山左衛門尉様とおやまさえもんのじょうさまの御屋敷へと人知れずまかり越したのである。仔細しさいというはほかでもない。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「じき其処なの、日蔭町ひかげちょうの古着屋なの。」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「此処は東京なら日蔭町ひかげちょう柳原やなぎわらです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
実は今日さる処まで暑中見舞に出掛けたところ途中でお店の若衆わかいしゅうに行き堀田原ほったわらの先生が日蔭町ひかげちょうのお屋敷へしかじかとのお話を聞き、わしも早速先生の御返事が聞きたさに急いでやって来ましたのさ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)