日下部くさかべ)” の例文
大きな洋傘こうもりをさしかけて、坂の下の方から話し話しやって来たのは、子安、日下部くさかべの二人だった。塾の仲間は雨の中で一緒に成った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あれですかい。ありゃ、日下部くさかべの気ちがい旦那のお城だよ。宝物をぬすまれるのがこわいといってね、村ともつきあいをしねえかわり者ですよ。」
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
次にヲマタの王は當麻たぎままがりの君の祖先です。次にシブミの宿禰の王は佐佐の君の祖先です。次にサホ彦の王は日下部くさかべの連・甲斐の國の造の祖先です。
いよいよはげしく敲立たたきたつるに、玄関をがらりと開けて、執事の日下部くさかべ、「門番の衆、門番の衆、開門。」と呼立つる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石和で腹をこしらえた米友は、差出さしでの磯や日下部くさかべを通って塩山えんざん宿しゅくへ入った時分に、日が暮れかかりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日下部くさかべ博士が昔ある学会で文明と地震との関係を論じたあの奇抜な所説を想い出させられた。
静岡地震被害見学記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「しおの山とは塩山えんざんのこと、差出さしでの磯はわたしの故郷八幡村から日下部くさかべへかかる笛吹川の岸にありまする」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その付近の人たちは、この建物を「日下部くさかべのお城」と呼んでいますが、むろんほんとうのお城ではありません。こんな小さな村にお城などあるはずはないのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それで日下部くさかべ氏のいわゆる少なく読む、その少数の書物にどうしたらめぐり会えるか。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
塾では更に教室も建増したし、教員の手もふやした。日下部くさかべといって塾のためには忠実な教員も出来たし、洋画家の泉も一週に一日か二日程ずつは小県ちいさがたの自宅の方から通って来てくれる。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この日下部くさかべの山と
雲水どもは土地の百姓たちと力を併せて、濁流の岸へ沈枠しずめわくを入れたり、川倉かわくらを築いたり、火の出るような働きです。ここの手を切られると、水は忽ち日下部くさかべ塩山えんざん一帯に溢れ出す。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日下部くさかべ君も私のそばへ来て、一所に窓の外を眺めて
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)