於福おふく)” の例文
すると、一人ぼっち、於福おふくが堤に立っていた。夏でも於福だけは、ちゃんと着物を着て、水にも泳がず、赤蛙も喰べなかった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、於福おふくではありませんか。もと清洲きよすの茶わん屋捨次郎すてじろうの息子。後に、流浪していたのを、しばらく長浜へ拾って飼いおいたことがあるが」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるじの茶わん屋捨次郎は、美しいお内儀かみと、息子の於福おふくをそばにおいて、火鉢と晩酌ばんしゃくの膳をそばに、よいごきげんでみんなに話をして聞かせている。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこには、幼友達の於福おふくがいた。於福はもう、十七、八の色白の青年で、養父の捨次郎の家業を助け、茶わん屋の若旦那として、実直に手伝っている。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、わが子として——いや生みの子以上にも、可愛がって育ててきた於福おふくへの、大きな愛の一つなのであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……こら! おたんこ茄子なす於福おふく! あはははは、何を泣くか。その年になっても、未だにそちは泣虫とみえる
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「茶わん屋の於福おふくはいかがいたしたろう。途中から連れて来たあの意気地ない人夫だ。ふたりで探して来い」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
於福おふく。……なぜ顔を上げないか。そちは尾張新川の茶わん屋捨次郎の息子、福太郎に相違あるまい」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国の探題たんだい羽柴筑前守と一介の茶弟子於福おふくとは、おのずから奉じゆく道はちがうが、世に楽土らくどて、人に益し、あわせて自分一箇も人間らしゅう達成してゆこうとする志に変りはない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)