新治にいばり)” の例文
雁金かりがねが寒く来鳴き、新治にいばりの鳥羽の淡海も秋風に白浪立つ頃ともなれば、女は自分が先に立ち奴たちを率いて、裾わの田井に秋田を刈った。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこがやっと主流で、いわゆる、下総、常陸の国境をなす毛野川(今の鬼怒川)の大河であり、新治にいばり、常陸の平野と、筑波の山が、彼方に見える。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蝦夷えびすどもをたいらげながら、常陸ひたち新治にいばり筑波つくばを通りすぎて、ここまで来るのに、いく夜寝たであろう」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「お留守でした。何ですか、新治にいばりの館に、およろこびの、招ばれ事があって、お出かけだとか、家人が申しました」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加波山で猟れた鹿らしく鹿島の猟で採れたあわび新治にいばりの野で猟れた、しぎ、那珂の川でとれたという、蜆貝しじみがい
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この大水郷をめぐって、結城ゆうき新治にいばり、筑波、豊田、猿島さしま、相馬、信太しのだ真壁まかべの諸郡があり、その田領でんりょうの多くは——というよりは、ほとんどが、この地方の源平二氏の分野になっていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)