新富しんとみ)” の例文
この中で挙げるとなると、昔、名を成した新富しんとみその弟子の新富支店、久兵衛きゅうべえくだって寿司仙すしせんくらいなものだろう。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
明治二十一年ごろ、東京の芝居は、大劇場に、京橋区新富しんとみ町の新富座、浅草鳥越の中村座、浅草馬道の市村座。
ある者は歌舞伎座主ざぬし新富しんとみ座主を訪問して、それに対する今度の方針を聞きただすであろう。ある者は団十郎や菊五郎を訪問して、それに対する彼らの意見を叩くであろう。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それはそうと、いずれ御結構振舞いが有りましょうネ。新富しんとみかネ、ただしは市村いちむらかネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これから一寸新富しんとみの立見に行きませんか、だつて——妾、あんな奴に、あんな処で話かけられて、すつかり赤くなつちやつたわよ、癪に触つたから、お角が違ふでせうツて云つたらばね
小川の流れ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
最近に『東西文学比較評論』といふ著作を公にした高安たかやす月郊氏は飄逸へういつな詩人風の性行をもつて知られてゐる人だが、ずつと以前自作の脚本を川上音二郎一派の手で新富しんとみ座の舞台にのぼした事があつた。
その一軒に近ごろ立ち上がった「新富しんとみ本店」および終戦後ただちに店開きした「新富支店」がある。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
また再興した新富しんとみ寿司本店も今までに見られないものを持って臨んでいる。これもまた、寿司王国を示している。こんなふうに寿司屋は体裁ていさいではグングンと万事に改良し進歩を示している。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)