断切ちぎ)” の例文
旧字:斷切
その爪の切入るごとに、巌はもろくぼろぼろと欠けて、喰い入り喰い入り、見る内にあやうく一重の皮を残して、まさに断切ちぎれて逆さまに飛ばんとする。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
十歳とおばかりの男の子に手を引かれながら、よぼ/\して遣ってまいり、ぼろ/\した荒布あらめのような衣服きものを着、肩は裂け袖は断切ちぎれ、恐しいなりをして居ります。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雨の音が一きわ騒がしくなって、風が煙突にうなり、庭園にわの方では木の枝の断切ちぎれて飛ぶ音がする。それに、猟犬どもが間断ひっきりなしに吠え立てるので、暴風雨あらしの叫びや樹々の軋る音も気圧けおされるくらいだ。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)