斜面なぞえ)” の例文
長崎の山々は深緑を畳み、その間に唐風からふう堂寺台閣どうじだいかくがチラホラと隠見いんけんする。右手の丘山おかやま斜面なぞえには聖福寺せいふくじ崇徳寺すうとくじの唐瓦。
ふきの厚い大名縞の褞袍どてら弁慶のしたうまを重ね、妹背山いもせやまの漁師鱶七のように横柄に着膨れて谷川に沿った一本道を歩いて行ったが、どこまで行っても山の斜面なぞえと早瀬の音。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ごろた石の川洲に中腰になって斜面なぞえの嶺のほうをうかがうと、歌ごえは真向いの段々畑からばかりではなく、額を合せるように八方から迫ったあちらの嶺からもこちらのはざまからも聞えてくる。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日に一度は川口の船屋敷へ出張して上荷あげに積荷の宰領をしていたが、夏も終って、川口に白々しらしらと秋波が立つ頃になると、船溜ふなだめにいる船頭や水子かこが、このごろ谷津の斜面なぞえにあるお邸の高楼たかどのに、一晩中
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)