斑竹はんちく)” の例文
七斤は象牙の吸口と白銅の雁首の附いている六尺余りの斑竹はんちくの煙管を手にして、頭をげてぶらぶら歩いて来た。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
わたしは斑竹はんちくとうに腰をおろし燭をかざして四方の壁に掛けてあるれん書幅しょふくの詩を眺めた。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
内庭の向うを覗くと、なるほど、斑竹はんちくのすだれ越しに、花瓶かびんの花、四ふく山水さんすい掛軸かけじく香卓こうたく椅子いすなどがいてみえる。——燕青えんせい禿かむろの女の子の手へ、そっとおかねを握らせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若者は襟を取られたまま、斑竹はんちくの笛をふり上げて、横払いに相手を打とうとした。が、素戔嗚は手もとをゆるめるまでもなく、遊んでいた片手を動かして、苦もなくその笛をじ取ってしまった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
美しい顔、きらびやかな勾玉、それから口に当てた斑竹はんちくの笛——相手はあのせいの高い、風流な若者に違いなかった。彼は勿論この若者が、彼の野性を軽蔑する敵の一人だと云うことを承知していた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
するとそこへもう一人の若者が、斑竹はんちくふえを帯へさして、ぶらりと山を下って来た。それは部落の若者たちの中でも、最も精巧な勾玉やくしろの所有者として知られている、せいの高い美貌びぼうの若者であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)