敗荷はいか)” の例文
蓮の実とか、敗荷はいかとかいう季寄本位の観念を離れて、秋天の下にいよいよ青い蓮葉を見る。そこに元禄の句の自然なところがある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
敗荷はいか、ああ敗荷よ。さながら人を呼ぶ如く心に叫んで、自分はもはや随分ずいぶん歩きつかれていながらも、広い道を横切り、石段を下りて、また石橋を渡った。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
八幡の駅の改札口を出て、小さい旅行鞄を左の手に、毛布を右の手に抱えて田圃たんぼの方へ出た。このあたりには、広々と敗荷はいかの池が続いていた。これから、どこへ行こうという目あてもない。
みやこ鳥 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
私は毎年の秋たけだいに開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも市気しき満々まん/\たる出品の絵画よりも、むかうをか夕陽せきやう敗荷はいかの池に反映する天然の絵画に対して杖をとゞむるを常とした。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
私は毎年の秋たけだいに開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも市気しき満々たる出品の絵画よりも、むこうおか夕陽せきよう敗荷はいかの池に反映する天然の絵画に対して杖をとどむるを常とした。