故旧こきゅう)” の例文
伝右衛門の素朴で、真率しんそつな性格は、お預けになって以来、つとに彼と彼等との間を、故旧こきゅうのような温情でつないでいたからである。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ついにそれがもとで発狂して死んでしまった。もとより親戚故旧こきゅうの無い身だから多分区役所の御厄介になった事だろう。
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
信州ではよめむこが実家へ遊びに行くことを、正月だけはセチニユクといっているが、埼玉県まで来ると親戚しんせき故旧こきゅうが、年始に集まって、酒宴を催すのがすべてオセチであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
親戚しんせき故旧こきゅう打ち寄りて、妾の不運を悲しみ、遺屍いし引き取りの相談までなせしとの事なりしも、幸いにして幾ほどもなく快方に向かい、数十日すじゅうにちを経てようやく本監に帰りたるうれしさは
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
いよ/\船が万年橋から出るという前夜になって、親戚故旧こきゅうの人に知らせますので、当日は親類縁者は申すに及ばず、友人達はいずれも河岸に集って身寄の囚人を待受けて居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
親属故旧こきゅうの音信贈遺ぞうい一両ばかり、すべて十一両余を引き、残る所二、三分に足らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
また日雇の扶持ふち麦一斛八斗米五斗を引き、正月餅などの米三斗余と種穀たねもみこくを引き、また子女あればその食料一人に九斗ばかりとつもり、また親属故旧こきゅうの会食二斗を引けば、米七斛二斗を残す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)