撲殺ぼくさつ)” の例文
だからこの二つの主義はいつでも矛盾して、いつでも撲殺ぼくさつし合うなどというような厄介なものでは万々ないと私は信じているのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「夷陵を落ちのびた逃げ上手の曹洪よな。さる恥知らずの敗将とほこを交えるが如き周瑜ではない。誰か、あの野良犬を撲殺ぼくさつせい」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一体それがなんの目的であるかは判らなかったが、ともかくもこんな妖物をそのままにして置くわけにはゆかないので、韓はその犬を庭さきへき出させて撲殺ぼくさつした。
たった今、人間に撲殺ぼくさつでもされたのか、なまなましい血の色だが、すでにハエがたかっている。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
それは家畜撲殺ぼくさつ同意調印法といい、たれでも、家畜を殺そうというものは、その家畜から死亡承諾書しょうだくしょを受け取ること、又その承諾証書には家畜の調印を要すると、こう云う布告だったのだ。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
盛んに牙ある赤子を撲殺ぼくさつした時代よりも、またずっと後年の田舎の事であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
市長は今後名古屋市に限り、野犬撲殺ぼくさつを禁ずると云っている。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夫人の自信と共に一棒に撲殺ぼくさつされた。肝心かんじんの鳥はふいと逃げたぎり、ついに夫人の手に戻って来なかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まだ面白い事があるよ。現代では警察が人民の生命財産を保護するのを第一の目的としている。ところがその時分になると巡査が犬殺しのような棍棒こんぼうをもって天下の公民を撲殺ぼくさつしてあるく。……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)