撫斬なでぎ)” の例文
「強い、強い、先方が強い。この分で、鍵屋の辻へ行こうものならまたたに、おのおの方が撫斬なでぎりになる」
撫斬なでぎりにしてやったら、さだめし、生姜しょうが冷酒ひやを飲んだように、さっぱりするだろうにと空想した。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又たとへ将門の方から手出しをしたにせよ、恋の叶はぬ忌〻しさから、其女の家をはじめ、其姉妹の夫たちの家まで、撫斬なでぎりにしようといふのも何となく奇異に過ぎ酷毒に過ぎる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
つまり、どの幕もどの幕も、海土蔵が一人もうけをやるように出来ているので、有象無象うぞうむぞうをいいかげん増長させておいて、ここぞというところで撫斬なでぎりにしてしまうのだから、見物は無性むしょうに喜ぶ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)