揺籃えうらん)” の例文
旧字:搖籃
封建の揺籃えうらん恍惚くわうこつたりし日本はにはかに覚めたり。和漢の学問に牢せられたる人心は自由を呼吸せり。鉄の如くに固まれるものは泥の如くに解けたり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
ああ、貧困は実に天才を護育するの揺籃えうらんなりき。敬虔なる真理の帰依者きえしやスピノザもまたくの如くなりき。彼は眼鏡磨臼すりうすをひいて一生を洗ふが如き赤貧のうちに、静かに自由の思索にふけれり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
揺籃えうらん記臆きおく
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
けだし徳川氏天下を平かにせしより、草木の春陽に向つて萌茁ばうさつするが如く、各種の思想は泰平の揺籃えうらん中に育てられたり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
米国の一文人かつて驚嘆して曰く、あゝ我が国の丸木小屋はれ大人物を出すの揺籃えうらんか、と。然り、彼の英傑ガーフイルドもまた、狼の声さへ聞ゆる林中のさゝやかなる丸木小屋に育ちたりし也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)