掻遣かいや)” の例文
一掴み馬上に掻遣かいやり、片手に手綱を控えながら、一蹄いってい三歩、懸茶屋の前に来ると、くだんの異彩ある目に逸疾いちはやく島野を見着けた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云い切ると、お千代を掻遣かいやるようにして歩き出した。しかし五六間歩いた時、気になるので、振返って見た。お千代が、放心したような姿で、尚、松本家の門前に佇んでいるのが見えた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……トタンに額を打って、鼻頭はなづらにじんだ、大粒なのに、むっくと起き、枕を取って掻遣かいやりながら、立膝で、じりりと寄って、肩までまくれた寝衣ねまきの袖を引伸ばしながら
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)