掩蔽えんぺい)” の例文
今頃はズット後方の掩蔽えんぺい部かキャムプの中で、どこかの配給車が持って来た葉巻でも吹かして納まり返っている事と思っていたが
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
味方の行動を掩蔽えんぺいするために煤煙の障屏しょうへいを使用しようとしたのが肝心かんじんの時に風が変って非常の違算を来たしたという事である。
戦争と気象学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
六人の精兵らは勇敢にも二百人の敵に向かって、ただすぐりの茂みを掩蔽えんぺいとして下から応戦し、十五分間ばかりささえたが皆戦死を遂げた。
一朝政権を握れば憲政会自身がまた官僚主義者たることにおいて同じ穴のむじなであることを掩蔽えんぺいし、寺内、後藤二氏から受取った悪罵以上の悪罵を以てむくいながら
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
これがうまうまと成就すれば、彼はこの金銭を自分の部屋の火鉢の灰の底へ掩蔽えんぺいしてしまう。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
『予章記』に、呉猛が殺せし大蛇は、たけ十余丈で道を過ぐる者を、気で吸い取り呑んだので、行旅たびびと断絶した。『博物志』に、天門山に大巌壁あり、直上数千じん、草木こもごも連なり雲霧掩蔽えんぺいす。
モローゾフ教授は、自分らのサボタージュを掩蔽えんぺいし、一同を無事安全サン・エ・ソーフに、静かな庭にかこまれたモスクワ大学の研究室へかえすために、すでに、四つの冷酷な殺人を行なっている。シルーキン教授。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
自分の専門が学全体を掩蔽えんぺいするその見掛け上の主観的視像を客観的実在そのものと誤認するような傾向を生ずる恐れが多分にあるのである。
学位について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
掩蔽えんぺいされた砲座の影に、イギリス歩兵は二個大隊ずつ十三の方陣を作り、第一線に七個方陣、第二線に六個方陣をそなえて二線に陣を立て、銃床を肩にあて
また女が専ら愛情の世界に住もうとするのも無智の弱点を無意識に掩蔽えんぺいしようとするからであって、女が特に男子よりも愛の深い先天性を備えているという訳ではなさそうです。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
よけいな調味で本来の味を掩蔽えんぺいするような無用の手数をかけないで、その新鮮な材料本来の美味を、それに含まれた貴重なビタミンとともに
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
制服というものはある意味では人間の個性を掩蔽えんぺいするものである。少し離れて見れば一隊の兵士は同じ鋳型でこしらえた鉛の兵隊のように見える。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
芸術のほうで考えてみてもなおさらのこと一時は新しいものが古いものを掩蔽えんぺいするように見えても、その影からまたいちばん古いものが復活してくる。
俳句の型式とその進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし同じ顔を見た時の印象が、見なかった時の印象を掩蔽えんぺいしてそう思わせるのかもしれない。
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
肝心の水谷八重子みずたにやえこの月のかんばせもしばしばその前方の心なき帽子の雲に掩蔽えんぺいされるのであった。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その上層を大部分掩蔽えんぺいするだけの経験の収穫をこの日本の環境から受け取り
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)