掙人かせぎにん)” の例文
さて掙人かせぎにんが没してから家計は一方ならぬ困難、薬礼やくれいと葬式の雑用ぞうようとにおおくもない貯叢たくわえをゲッソリ遣い減らして、今は残り少なになる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
何だとえ、馬鹿にしなんな。これでも米を食う虫一疋だ。兵隊屋敷の洗流あらいながしにもしろさ。はばかりながら御亭主は鉄道馬車の馬糞まぐそさらいやす、きつ掙人かせぎにんさね。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体何者だろう? 俺のように年寄としとった母親があろうもしれぬが、さぞ夕暮ごとにいぶせき埴生はにゅう小舎こやの戸口にたたずみ、はるかの空をながめては、命の綱の掙人かせぎにんは戻らぬか、いとし我子の姿は見えぬかと