振播ふりま)” の例文
初代の喜兵衛も晩年には度々江戸に上って、淡島屋の帳場に座って天禀てんぴんの世辞愛嬌を振播ふりまいて商売を助けたそうだ。
場主までわざわざ函館はこだてからやって来た。屋台店や見世物小屋がかかって、祭礼に通有な香のむしむしする間を着飾った娘たちが、刺戟しげきの強い色を振播ふりまいて歩いた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
栗屋くりや君は人波にただよながら左右前後に眼と注意とを振播ふりまき始めた。と、ぐ眼の前を歩いて居る一人の婦人に彼の心は惹付ひきつけられた。形の好い丸髷まるまげと桃色の手絡からなだらかな肩。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
決して人をらさなかった。召使いの奉公人にまでも如才なくお世辞を振播ふりまいて、「家の旦那さんぐらいお世辞の上手な人はない」と奉公人からめられたそうだ。