押領おうりょう)” の例文
すでにこれを乱だりてこれを押領おうりょうしたるうえは、また、聖人の道をもってこれを守るべし。敵のためにも可なり、味方のためにも可なり。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
商物は調ととのうる者もこれ有れども、払いを致す者もなく御政道もなく、押領おうりょう致しても制止も届兼ね難渋なんじゅう致し申すべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
れば既に半右衞門の妻では無く、離縁したも同じ事で、離縁したおんな仮令たとえ無瑕むきずでも、長二郎のために母で無し、まして大悪無道、夫を殺して奸夫を引入れ、財産を押領おうりょういたしたのみならず
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その財産を押領おうりょうなすべきたくみなれば。ついにはあの方にのみ多くありて。物見遊山なども相のりをなして。これみよかしとわが家の前を通行なすなど。浜子はくやしさやるかたなきものから。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
後柏原ごかしわばら天皇大永たいえい年間、陸奥みちのく一円にかくれなき瀬越の何がしという大賊、仙台名取川なとりがわの上流、笹谷峠ささやとうげの附近に住み、往来の旅人をあやめて金銀荷物押領おうりょうし、その上、山賊にはめずらしく吝嗇りんしょくの男で
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
祖五郎は前席ぜんせきに述べました通り、春部梅三郎を親のかたきと思い詰めた疑いが晴れたのみならず、悪者わるものの密書の意味で、ぼお家を押領おうりょうするものが有るに相違ないと分り、わたくしの遺恨どころでない
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)