扮裝なり)” の例文
新字:扮装
一つフロツクコートで患者くわんじやけ、食事しよくじもし、きやくにもく。しかれはかれ吝嗇りんしよくなるのではなく、扮裝なりなどにはまつた無頓着むとんぢやくなのにるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『あら、鮎釣には那麽扮裝なりして行くわ、皆。……昌作さんは近頃毎日よ。』と言つてる時、思ひがけなくも礫々ごろ/\といふ音響が二人の足に響いた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いえ、王子で着換へたのは女形のあつしだけで、あとは六部や虚無僧や巡禮だから氣が強いわけで、あの扮裝なりで淺草から繰出しましたよ、へエ」
八五郎はその扮裝なりで、兩國の方へ行つたが、郡代屋敷の前から引つ返して、新し橋へかゝる前に、大路地の九頭龍求女もとめの浪宅をヒヨイと覗きました。
『私、甚麽どんなに困つたでせう、這麽こんな扮裝なりをしてゐて!』と靜子は初めて友の顏を見た。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「よくその扮裝なりで、淺草橋御門から駈けて來たものだ。そつちを向きな」
「その扮裝なりで歩くと町内の者が氣が付く筈だが——」