打蔽うちおお)” の例文
……手拭を口にくわえた時、それとはなしに、おもてを人に打蔽うちおおう風情が見えつつ、眉を優しく、ななめだちの横顔、瞳の濡々ぬれぬれと黒目がちなのが、ちらりと樹島に移ったようである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
力なく引手に手をかけ、もすそを高くい取って、ドンとすと、我ながら、蹴出けだしつまも、ああ、晴がましや、ただ一面に鼠の霧、湯花の臭気においおもてを打って、目をも眉をも打蔽うちおお土蜘蛛つちぐもの巣に異ならず。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)