打伏うつぶ)” の例文
其三尺四方のどぶのやうな田池の中には、先刻さつき大酔して人にたすけられて戸外へ出たかの藤田重右衛門が、殆ど池の広さ一杯に、髪をだし、顔を打伏うつぶして、丸で
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
大概の死体が打伏うつぶせになっているので、それを抱き起しては首実検するのであったが、どの女もどの女も変りはてた相をしていたが、しかし彼の妻ではなかった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
越中守の、黒い着物と、袴とが、水へ写って打伏うつぶせになって、浮上ってきた。
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
時雄はわびしい薄暮をにがい顔をして酒を飲んでいた。やがて細君が下りて来た。どうしていたと時雄は聞くと、薄暗い室に洋燈ランプけず、書き懸けた手紙を机に置いて打伏うつぶしていたとの話。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
登って行って見ると、芳子は机の上に打伏うつぶしている。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)