手附てつけ)” の例文
その日のとり下刻げこくに、上邸かみやしきから見分けんぶんに来た。徒目附、小人こびと目附等に、手附てつけが附いて来たのである。見分の役人は三右衛門の女房、伜宇平、娘りよの口書くちがきを取った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「うむ。万事承引、即刻、打ち立たせよう、越前の手とて、よも、今夜には、立つまい。これから戻って、早馬ならば四日みち、町奉行手附てつけでは、十日はかかろう、よしっ」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ひとりは、手附てつけの用人伊吹大作の弟で錦也きんやであった。錦也は梅舎錦之助うめのやきんのすけと偽名して、一時お駒ちゃんの情夫となり、それとなしに磯五の人物、策動、磯屋の内幕などをさぐり出した人であった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手附てつけを受取って物品を預っておくんじゃからあ
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
させたりける或時彦兵衞隱居の方へ來り淺草觀音地内の小間物屋に品物しなもの有る故仲間内の直踏ねぶみには十五兩から九十兩まで付上つけあげたれども能々よく/\見るに百兩に買ても二十兩位は利の有る代物しろものなれば私し百兩と入札にふさついたし落札おちふだになりたる故十兩手附てつけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)