手洗鉢てあらいばち)” の例文
が、私はよく勝手を知っていたので、庭の目隠しの下から手を差し込んで木戸きどかぎを外し、便所の手洗鉢てあらいばちわきから家の中に這入はいった。
庭の土塀のくつがえったわきに、大きなかえでの幹が中途からポックリ折られて、こずえ手洗鉢てあらいばちの上に投出している。ふと、Kは防空壕ぼうくうごうのところへかが
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そして壁際かべぎわひざまずいてお祈りをすまして学校に出かける。洗面器は売ってしまったので顔を洗うことが出来ないから、顔は途中にある湯島公園の便所の出口の手洗鉢てあらいばちで洗った。
火の手が見えだして、そこから逃げだすとき、庭のすみに根元から、ぽっくり折れ曲って青い枝を手洗鉢てあらいばちに突込んでいたかえでの生々しい姿は、あの家の最後のイメージとして彼の目に残っている。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)