慥乎しっか)” の例文
九鬼嘉隆くきよしたかという贅肉ぜいにくもなく骨じまりの慥乎しっかとした色のくろい男だ。いわゆる潮みがきにかけられた皮膚と生きのいいぼらみたいな眼をもって
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより、主君の御威光はいうまでもないが、おまえたち領民が、お城を中心に、慥乎しっかと、国土を護っていてくれるからだ。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そなたも慥乎しっかりした相鎚の打ちがないと、常々、云い暮している折ではあるし……。真雄ようじゃな?
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追って、そうお訊ね下さる友誼ゆうぎに対して、甚だ不挨拶ぶあいさつを申すようで恐れ入るが、いささか思案もござれば、どうぞ御懸念なく、留守方のお勤め、慥乎しっかとお守りねがいたい
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汗でビショ濡れになっている体は頂上の大地へ慥乎しっかと貼りついていて、山の性と、人間の性とが、この黎明れいめいの大自然の間に、荘厳なる生殖をいとなんでいるかのように
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
権叔父のからだは、慥乎しっかと若い女の帯をつかんでいた。そのふたりとも、息はなかった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ええ、これだけは、お父っさんと死に別れた後も、慥乎しっかと持っていました。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寧子は静かに、留守の一族や侍たちへ殿軍しんがりのさしずをした上、侍女たちの手もかりず、自分の背に母を負って、慥乎しっかいつけ、片手に薙刀なぎなたを携えて、東浅井郡ひがしあさいごおりの山奥、大吉寺だいきちじへのぼった。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一美濃方面は、御存じの池田勝入、稲葉伊予、森武蔵など、慥乎しっかと構えており、別条なく、江州永原に、孫七郎秀次、高山右近、中川秀政、そのほか一万四、五千もの人数を、陣取らせ申した。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たしかに——こう懐中ふところ慥乎しっかと——肌につけていたつもりだが』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)