悚然しようぜん)” の例文
読み到りて当時を追想すればうた悚然しようぜんたらずんばあらず、しかも今之を誌上に掲載して、昔日の夢を笑ふが如き、けだし天の幸のみ。碧梧桐附記。
牡丹句録:子規病中記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そのあした横雲白よこぐもしろ明方あけがたの空に半輪の残月を懸けたり。一番列車を取らんと上野に向ふくるまの上なる貫一は、この暁の眺矚ながめうたれて、覚えず悚然しようぜんたる者ありき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あの鉄面皮と高慢——電気に触れたやうにさう思へた刹那せつな、私は悚然しようぜんと身を縮め、わな/\打震へた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
極めて熱熾アーネストなる悲劇の真中に、極めて幽玄なる光景を描き出す、こゝに於て平生幽霊を笑ふものと雖、悚然しようぜんとして人界以外に畏るべきものあるをり、悪の秘し遂ぐべからざるを悟る。
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
悚然しようぜんとして忍び足にそこを立去りぬ。
当世二人娘 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)