恭謙きょうけん)” の例文
「アハハハ君は刑事を大変尊敬するね。つねにああ云う恭謙きょうけんな態度を持ってるといい男だが、君は巡査だけに鄭寧ていねいなんだから困る」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恭謙きょうけんそのものを形に現わしたならば、こうもあろうかと思われるような、——そういう恭謙な態度となったが「いわく!」ともう一度言葉をなぞった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、言い、わしは出所して始めての暖かく恭謙きょうけんな挨拶を受けたが、その時、眼をあげた奈世はわしの眼にぶつかると、わしにもはっきりとわかる程に顔をあからめた。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
しかし老母の恭謙きょうけんな礼儀はそれをそっと拒むかのようにして、こういうのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところを生れ得て恭謙きょうけんの君子、盛徳の長者ちょうしゃであるかのごとく構えるのだから、当人の苦しいにかかわらずはたから見ると大分だいぶおかしいのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誠忠、律義、木訥ぼくとつ恭謙きょうけん、そういう性質の正成ではあったが、宮家とはことごとく気心が合い、水魚の交わりを呈していたので、何事も気安く云うことが出来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ほんのお口添えをしたばかりで」道人の調子は恭謙きょうけんである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)