彼家かしこ)” の例文
遊びにきし時、その理由わけ問いたるに、何ゆえというにはあらず、飽きたればなりとのたまう。されど彼家かしこなる下婢かひの、ひそかにそのまことを語りし時は、稚心おさなごころにもわれ嬉しく思いみぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また広徳寺前には我が幼き頃より知れる藤作といへる名高き店あり、特に藤作は世の聞え人の用ゐも宜し、彼家かしこに至らば良き品を得んこと疑ひあらじ、同じわざをするものは相忌み相競ふものなれば
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)