彷徨うろうろ)” の例文
「危ねい! 往来の真ン中を彷徨うろうろしてやがって……」とせいせい息をはずませながら立止って怒鳴り付けたのは、目のこわい車夫であった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
時としては、従同胞いとこ共が私の家へ遊びに来る。来るといつても、先づ門口へ来て一寸々々ちよいちよい内を覗きながら彷徨うろうろしてゐるので、母に声を懸けられて初めて入つて来る。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
明後日あさってまでに何とかめて了わなければならぬ、と、言っていたから、二日ばかりは其様そんな取留めもないことばかりを思っていたが、丁度その日になって、日本橋の辺を彷徨うろうろしながら
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
何日いつだったか忘れたが、雨のふる日の夕方に、俺が町へ食物くいものあさりに出て、柳屋の門口かどぐちに立って彷徨うろうろしていると、酒に酔った奴等が四五人出て来て、の乞食め、彼地あっちへ行けと俺を突き飛ばした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何だかもうかっとなって、夢中で、何だか霧にでも包まれたような心持で、是から先は如何どうなる事やら、方角が分らなくなったから、彷徨うろうろしていると
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
唯相手のない恋で、相手を失って彷徨うろうろしている恋で、其本体は矢張やッぱり満足を求めて得ぬ性慾だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)