弘通ぐずう)” の例文
これからの半生を念仏の弘通ぐずうにささげたいという心願を訴えたので、親鸞もそれをゆるして、碓氷川から北と南へたもとを分ったためであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏道は四海に弘通ぐずうすべく、我は四海の法王たるべき身分だから何処どこへ往ったからって親疎の別を存せずというを聴いて王感服し、鉢と比丘を渡ししもうた。
悲しむべし辺鄙へんぴの小邦、仏法未だ弘通ぐずうせず、正師しょうし未だ出世せず、たゞ文言もんごんを伝へ名字みょうじじゅせしむ。もし無上の仏道を学ばんと欲せば遥かに宋土の知識を訪ふべし。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
といわれた時、聴衆の中に一人の隠遁の僧があったが、おのれの草庵には帰らないで直ぐ筑後の国に下って聖光房につき門弟となり、九州弘通ぐずうの法将となったものがある。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
回教弘通ぐずうに努力したと、こう文献に記されてあるが、詳細のことは作者も知らない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今日は末法時代といって仏教の弘通ぐずうにまたひと工夫要る時代となっております。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
赫々かっかく弘通ぐずうあそばすというご勇気をもって、これより東海道をお上りくださいますように、吉水一門の遺弟を代表いたしまして、私からもおねがい申し上げまする
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兄は、他力門の弘通ぐずうに北国へ。——弟のお身は、自力聖道門しょうどうもんの山へ。こう二つの道は、西と東ほど違うようだが、辿たどり登れば、同じ弥陀みだの膝なのじゃ。……弥陀のお膝でまた会おうの」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)