引掛ひきか)” の例文
着慣れませぬ新らしい笈摺を引掛ひきかけ、雪卸ゆきおろしのすげの笠には同行二人どうぎょうににんと書き、白の脚半に甲掛草鞋こうがけわらじという姿で、慣れた大工町を出立致しまする。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
笑ひ落ちに、すぐに井戸の中へすべり込みまするところを、おのれと、奴めの頭をつかみましたが、帽子だけ抜けて残りましたで、それを、さらしものにいたしまする気で生垣いけがき引掛ひきかけて置きました。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かくつぶやきつつ庭下駄を引掛ひきかけ、急ぎ行きて、その想へるやうに燈籠によらしめ、頬杖をつかしめ、空を眺めよと教へて、たもとしわめるをべ、すそもつれを引直し、さて好しと、すこし退きて姿勢を見るとともに
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と直ぐに羽織を引掛ひきかけ、一刀して女房おかやを連れ、文治郎の台所口から
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)