引振ひっぷる)” の例文
鹿の子の見覚えあるしごき一ツ、背後うしろ縮緬ちりめんの羽織を引振ひっぷるって脱いでな、つまを取ってながしへ出て、その薬鑵の湯をちまけると、むっとこう霧のように湯気が立ったい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、息をふくんだ頬を削って、ツとく涙に袖を当てると、いう事も、する事も、訳は知らず誘われて、糸七も身を絞ってほろほろと出る涙を、引振ひっぷるうように炉に目をらした。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)