弓弦ゆんづる)” の例文
キ、キ、キ……と引きしぼった花栄の弓弦ゆんづるがぶんと鳴ったと思うまに、遠い所の一点の火光が、とたんにぱっと掻き消された。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この眩暈と、風邪と、も一つ、用達ようたしと云う断りが出る、と箱三はこさんの札は、裏返らないでも、電話口の女中が矢継早の弓弦ゆんづるを切って、断念あきらめて降参する。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祇園の下級神人なる犬神人いぬじにん弓弦ゆんづるを作ってこれを売り、「弦召し候え」と呼び歩いたのでツルメソと呼ばれた。
間人考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
それは籐を一パイに卷いた思ひの外の強弓がうきうで、弓弦ゆんづるは外したまゝですが、弓そのものは、埃も留めずに、よく拭いてあり、近頃使つた樣子も無いくせに、弦などが
小森は落ちた花鋏を拾い上げて、神尾に示し、人混みの中に紛れ込んでいた奴が、不意にこれで張り切った弓弦ゆんづるを後ろから切ったということを、言葉と挙動とでいそがわしく説明しました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殆んど十年ちかいあいだ、追いつめては逃げられたこと、そしてついに、吹雪の中で正面し、勝敗を決する瞬間に、自分の弓弦ゆんづるが切れた。というところまで話したとき、藤井が戻って来た。
縦の直線は上から下へ、下から上へ、どんなに長くとも、身体ごとぶつかつて弓弦ゆんづるのごとく引つぱれ。横の線も左から右へ、右から左へ引きこなせ。そのほかに、渦巻きをかくことも益があらう。
秋艸道人の書について (新字旧仮名) / 吉野秀雄(著)
と見た花栄かえいは、わけもなくぞッとして「あっ、妖人?」と、思わず引きしぼッた弓の弓弦ゆんづるをぶンと切った。その矢はあやまたず、高廉こうれん真額まびたいを射た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち弓を作る、矢を作る、弓弦ゆんづるを作る。或いは靴を作ったので、「祇園の靴作り」とも云われていた。伝教大師が支那から靴を作る法を伝えて、これを彼らに教えたと云われている。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
花鋏でいま張り切った弓弦ゆんづるをチョキンと切ってしまって、態あ見やがれと叫んで、花鋏を投げつけて、桟敷の下へ潜って行ったというような細かい働きは、彼等には認めることができませんでした。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)