弁口べんこう)” の例文
旧字:辯口
敬太郎はこんな話を聞くたびにへえーと云って、信じられ得ない意味の微笑をらすにかかわらず、やっぱり相当の興味と緊張とをもって森本の弁口べんこうを迎えるのが例であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「千坂は弁口べんこう武士だ、戦場へは出ずに留守城で稼ぐ、そう申しているのをご存じですか」
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「お早くお越しねがいとう存じます。弁口べんこうをもって、天蔵殿を召し連れては参りましたが、妙な? ——と気どられたか、落着かないご挙動。悪くすると、おりを破る虎になるやも知れませぬ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中には弁口べんこうと男前で、それを出世のつるにしている野郎はあるものだよ
ゆっくり弁口べんこうを練っておけば、ここを言い抜けるぐらいのことはなんでもあるまい——と源十郎、たかをくくって、いまの役人の帰ってくるのを待ってみたが、追っ手は早くも法恩寺橋を渡って
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どうせ、こんな手合てあい弁口べんこう屈伏くっぷくさせる手際はなし、させたところでいつまでご交際を願うのは、こっちでご免だ。学校に居ないとすればどうなったって構うもんか。また何か云うと笑うに違いない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)